維摩詰所説経
ゆいまきっしょせっきょう一般的に「維摩経」といわれる、大乗仏教経典の一つ。
今回は、鳩摩羅什が漢訳した「維摩詰所説経」より、巻中之第三、佛道品第八の一節を抜粋して書きました。文殊菩薩の「菩薩は何のようにして仏道に通達するのがよいでしょうか」という問いに対し、在家信者の維摩居士が答えたくだりです。
訳文を読んでいてなにか心にザワザワするものがあったので、半切(約1366x335mm)の画仙紙二枚に二時間かけて書きました。
意味を消化できたわけじゃありませんが、もしかすると何か生き方のヒントがありそうな。
お時間あればご一読ください。
………
若菩薩行
五無間而無惱恚
至于地獄無諸罪垢
至于畜生無有無明憍慢等過
至于餓鬼而具足功德
行色無色界道不以為勝
示行貪欲離諸染著
示行瞋恚於諸眾生無有恚閡
示行愚癡而以智慧調伏其心
示行慳貪而捨內外所有不惜身命
示行毀禁而安住淨戒乃至小罪猶懷大懼
示行瞋恚而常慈忍
示行懈怠而懃修功德
示行亂意而常念定
示行愚癡而通達世間出世間慧
示行諂偽而善方便隨諸經義
示行憍慢而於眾生猶如橋梁
示行諸煩惱而心常清淨
示入於魔而順佛智慧不隨他教
示入聲聞而為眾生說未聞法
示入辟支佛而成就大悲教化眾生
示入貧窮而有寶手功德無盡
示入刑殘而具諸相好以自莊嚴
示入下賤而生佛種姓中具諸功德
示入羸劣醜陋而得那羅延身
一切眾生之所樂見
示入老病而永斷病根超越死畏
示有資生而恒觀無常實無所貪
示有妻妾采女而常遠離五欲淤泥
現於訥鈍而成就辯才總持無失
示入邪濟而以正濟度諸眾生
現遍入諸道而斷其因緣
現於涅槃而不斷生死
文殊師利
菩薩能如是行於非道
是為通達佛道
……
極悪人と交わって悩まず
奈落にあって穢れず
畜生の群れの中でも驕らず
餓鬼に堕ちるとも徳を失わず
闇の世界にあっても高ぶらず
欲界にあって欲に溺れず
怒りに身を任せても心は静かで
愚行をなしても智恵を忘れず
吝嗇であっても身を惜しまず
戒めを破っても心は浄く
憤る事はあっても慈しみの心を持ち
怠るようでいて内では励み
無知のように見えて教えを守り
高慢に見えても陰では優しく
煩悩の中で解脱し
魔道に入って仏道を目指す
教えを聞き同時に教えを説く
孤高を守って、衆生と共にある
貧窮の中で宝を保持し
欠陥をもって万全である
下賎の中で高貴であり
醜い姿の中に神の如し美しさをもつ
老いて病むとも死を恐れず
財産家であっても無常を観じ
妻妾に囲まれて欲望を断っている
寡黙にして雄弁
異端にして正統
外道に踏み込んで仏道を極める
涅槃にありながら衆生と共に輪廻転生し
見かけの上ではひたすら非道を歩む
これぞ真の仏道なり (作品社「釈迦と維摩」の解説より)
禅のことば – 267 / 365
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