しじま(静寂)

しじま(静寂)
SHIJIMA
silence



LINEの「既読スルー、未読スルー」も、純日本風に言うなら「しじま」です。

調べるとどの辞書でも、まず「静まり返っていること」という解説があり、次に「口を閉じて黙りこくっていること」となっています。国語の試験で「しじまとは?」と問われれば、たぶん前者の「静まり返っていること」と書かないと点数はもらえないですが、どうやら本来の意味は後者の「口を閉じて黙りこくっていること」だったようです。

辞書の用例には、よく源氏物語の「いくそたび 君がしじまにまけぬらむ ものな言ひそと言はぬ頼みに」という和歌が紹介されています。これは源氏が「何度も末摘花のしじま(告白しているのにうんともすんとも返事をくれないこと)に負けてもうどうしようもないよ」とぼやくくだりで登場する歌ですが、古典ではこのように「無言」をあらわす使い方しか登場しないとか。

近代になって「静寂」というあて字が使われるようになり、意味も「静まり返っていること」という風に変化しましたが、想像するにこれは日本の古典に詳しい文筆家の誰かさんが「静けさ」を比喩的に表現したあたりから始まったんじゃないでしょうか。

現代では、文学作品の中で「夜の静寂(しじま)にまぎれて」みたいな表現をたまに目にするくらいで、日常会話で耳にすることはまず皆無。辞書の用例を調べても和歌や短歌が紹介されているのみなので、もしかすると文学の中でだけ生き残ってきた大和ことばなのかもしれないですね。


ちなみに、写真は「源氏にしじまをカマしている末摘花」のイメージです。


しじま(静寂)


大和ことば – 014 / 365

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