おに(鬼)


おに(鬼)
ONI
tagger, devil



中世までの日本では、暗闇に潜む得体のしれない魔物、あるいは怨霊的な存在のことを「物(もの)」、または「醜(しこ)」と言って恐れていました。「もの」は「もののけ」の「もの」です。人が亡くなることを「鬼籍(きせき)に入る」という言い方をするように、漢字の「鬼」は本家中国では死霊のことを意味する漢字。奈良時代にはすでに「鬼」の字が輸入されていましたが、当時は霊魂的なものという意味で「もの」という和語をあてて読んでいたと言われています。

「おに」という言葉が登場するのは平安期以降。源順の「倭名類聚鈔」によると「姿の見えないもの」という意味の「隠(おん)」が転じて、「おに」と言われるようになったとあります。伊勢物語、枕草子、大鏡など、この当時の書物には「鬼」が頻繁に登場するようになりますが、私たちが知るツノがあってカラダが大きく力が強いヒューマノイド的なイメージの「鬼」は登場せず、あくまで姿の見えない霊魂的な観念をあらわしています。

具体的に「鬼」の姿が語られているのは1100年代に記された「今昔物語」。真っ赤な顔の男の姿をしていて琥珀のような目が一つ。背丈は270cmくらい。手の指は3本で爪は15cmほど伸び、髪は乱れていると解説されています。

その後、室町期に入ると私たちがよく知る「鬼」のイメージが絵画として描かれるようになります。それらは仏教の伝来とともに伝わった「夜叉(やしゃ)」などのインドの鬼の概念が強く影響しているとか。江戸時代になると鬼の存在はあまり恐れられなくなり、物語の中にのみ登場する悪役キャラクターとなって現在に至ります。

今となっては完全な夜闇を見つけるのは至難の業ですが、昔の人にとって、暗闇は本当に恐ろしいものだったんでしょうね。


やまとことば – 312 / 365

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