おもてなし(お持て成し)


おもてなし(お持て成し)
OMOTENASHI
hospitality



言葉としては平安の頃から使われていたもので、源氏物語 第六帖「末摘花」には、「うたてあるもてなしには、よもあらじ(取り返しのつかないような振る舞いをすることは断じてないだろう)」、「人疎うもてなしたまへば(人とあまり交流がないので)」などの表現が登場しますが、いずれも、態度や振る舞いという意味で使われています。

元々は、以て(意思をもって、主体的に)成す(何かをする)という「もてなし」に丁寧語のおをつけたもの。なので本来の言葉の意味は幅広く、「とりなしやたしなみ、ふるまい、態度、あしらい、待遇、馳走や饗応」と辞書には色んな解説が。

現代のように「お客様を歓待する」なかでも「食事などを振る舞う」という意味合いが強くなったのには、どうやら茶道の文化が大きく影響している模様。日本人のおもてなし精神のルーツもそのあたりにあるのかもしれません。ちなみに、千利休がまとめた「おもてなし」の教えはこんな感じです。

 「利休七則」

  一. 茶は服のよきように点て
  二. 炭は湯の沸くように置き
  三. 花は野にあるように
  四. 夏は涼しく冬暖かに
  五. 刻限は早めに
  六. 降らずとも傘の用意
  七. 相客に心せよ


茶は飲みやすいように温度や量を考えて点てる。炭は湯が沸きやすいように置き、花は野に咲いているように活ける。気候に合わせて過ごしやすいよう配慮し、時間には余裕を持って行動。万が一の備えを怠らず、心をこめて客人に接する。日本人特有の考え方と言えそうなのは侘び寂びの精神を代表する「三. 花は野にあるように」と、世界一正確だと言われる「五. 刻限は早めに」あたりでしょうか。
どうですか、意外にふつうのことを書いてるなと思いませんか。もしそう思ったのなら、あなたの中にも「おもてなし精神」が息づいているということなのかもしれません。


これは余談ですが、茶道の精神をあらわす「一期一会」という言葉は、千利休の高弟である山上宗二という人物の「一期に一度の参会の様に」という言葉が元になっており、幕末になって井伊直弼が著した「茶湯一会集」の中で紹介され、広く広まったとか。せっかくなのでこちらも紹介しておきます。

茶湯の交会は、一期一会といいて、たとへは幾度おなじ主客交会するとも、今日の会に再び返らざる事を思へば、実に我一世一度の会なり、去るにより、主人は万事に心を配り、聊も麁末のなきよう深切実意を尽くし、客にも此会にまた逢ひかたき事を弁へ、亭主の趣向、何壱つもおろかならぬを感心し、実意を以て交るへき也、是を一期一会といふ。

「茶湯一会集より」




大和ことば – 124 / 365

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