鏡水圖山(きょうすいとざん)禅語 禅書 書道作品


鏡水圖山

きょうすいとざん


ぼくたちのカラダには約100兆もの細菌が住んでいるそうです。ヒトの細胞数は約37兆個と言われていますから、オリジナルである自分自身の遺伝子よりはるかに多い他種の遺伝子を体内に保有していることになります。ヒトはほぼ無菌の状態で育まれ、この世に生まれる瞬間にまずは母親の産道で、続いて周囲の環境から細菌をもらい、これを体内で増やしながら生きていきます。たとえ同じ母親から同じ時間に生まれた一卵性双生児でも、全く同じ細菌のパターンを持つ人はいないんだとか。

これらの細菌群は、基本的には人体を正常に保つ働きをしてくれていて、有益な共生関係が成り立っています。最近の医学界では、この体内の細菌群をひとつの大きな生態系と見て「マイクロバイオーム」と呼んでいるそうです。もちろん住んでいる地域によって、あるいは摂取している水や食物によってこのマイクロバイオームのパターンは異なります。最近の研究では、このマイクロバイオームのパターンが、発病傾向やアレルギー、肥満傾向などのカラダの問題だけじゃなく、性質や思考、気分やストレス耐性などにも影響力を持っていることがわかってきているんだとか。もはやヒトの「個性」の一部を形成しているといってもいいのかもしれませんね。


閑話休題。禅語に、「鏡に写った水、絵に描かれた山」という意味の「鏡水圖山」という言葉があります。魚も水草も生息できない鏡の中の水、鳥も昆虫も飛べない絵の中の山。この世には存在しないバーチャルな世界でもあり、完全に人類のコントロール下にある理想の環境でもあり。
昨今の何でもかんでも消毒する「除菌」ブームしかり、ことあるごとに処方される殺細菌薬、抗生物質しかり。ぼくたち人類は、せっせと自身の体内のマイクロバイオームを「鏡水圖山」の世界にしようとしているような。

もしかするとぼくたちの孫の世代くらいには、抗生物質がなくなって細菌の飲み薬やマイクロバイオームの移植なんてことが当たり前になっているかもしれませんね。
早く研究が進むといいなぁ。


禅のことば – 046 / 365

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